聖アンナのいる聖家族 エル・グレコ

聖家族に母アンナや幼児ヨハネを描き加えたエル・グレコ作品

聖母マリア、母アンナ、幼児イエス、そして父ヨセフを描いたエル・グレコの宗教画「聖アンナのいる聖家族」。1590年から95年頃に製作され、トレド(トレード)のタベーラ病院(施療院)に所蔵されている。

ダヴィンチ、ラファエロ、ミケランジェロと、エル・グレコに限らず聖家族を主題とする宗教画は多数存在するが、エル・グレコの作品では聖母マリアの母アンナが描き加えられることで、キリストの母系が強調されているという(一種のマリア礼賛)。

上空の雲の形は非常に恣意的に描かれ、聖母マリアや母アンナの頭部周辺に雲を円形に集めたり、逆に円形に切れ間を配置することで、後光が暗に表現されているようにも見える。

聖アンナと幼児ヨハネのいる聖家族

エル・グレコ「聖アンナのいる聖家族」と似た構図に幼児ヨハネが描き加えられた「聖アンナと幼児ヨハネのいる聖家族」。同主題の作品が複数存在するが、これは1600年頃に製作された作品。プラド美術館(マドリード)蔵。

先に紹介したエル・グレコ「聖アンナのいる聖家族」に比べて全体の雰囲気が暗く、人物の表情もどことなく不安な面持ち。画面右下に描かれる幼児ヨハネは右手に桃を入れた鉢をもち、左手を口唇にあてて画面の外側へ視線を向けている。

待ち受ける受難への不安を表現?

幼児ヨハネの左手の仕草は、聖母マリアの膝の上で眠りにつこうとする幼児イエスを気遣い、周囲の人々に静粛を呼びかけているようにも見える。さらに言えば、やがて待ち受ける「キリストの受難」という神秘に対する静寂の呼びかけなのかもしれない。

参考:中央公論社「カンヴァス世界の大画家 12 エル・グレコ」作品解説

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エル・グレコ
ギリシャからスペインのトレドに移住した異邦人画家。ルネサンス後期マニエリスム。
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