人生 La Vie ピカソ

画面にはカサジェマスやピカソ本人も 女性はジェルメーヌ?

ピカソ「青の時代」を象徴する作品として特に有名なピカソの絵画作品「人生 La Vie ラ・ヴィ」(邦題は単に「生」、「命」などとも表記される)。ピカソと共にパリでアトリエを共有していた親密な友人カサジェマス(カサヘマス)(Carlos Casagemas)の痛ましい事件が作品に暗い影を落としている。

ピカソ「人生 La Vie」 1903 油彩 196.5 × 128.5cm クリーヴランド美術館(オハイオ)蔵

男性はピカソの友人カサジェマス

まず、画面左手で寄り添う二人の裸の男女は、男性がピカソの友人カサジェマス(カサヘマス)。右側の女性に抱かれる赤子を指さしているが、これは伝統的な宗教画(キリスト教)において、聖母マリアに宿った幼な子イエスを指さす描写を彷彿とさせる。

ピカソによるスケッチの段階では、この男性はピカソ自身だったという。女性はカサジェマスが思いを寄せていたモデルのジェルメーヌとも言われることがあるが定かではない。

ジェルメーヌに恋したカサジェマス

なお、カサジェマスの恋は実らず、失恋を克服できなかった彼は1901年2月、ジェルメーヌを道連れに拳銃自殺を図る。彼の死はピカソに多大な影響を与え、その後の「青の時代」の大きな一因となっていく。

カサジェマスとジェルメーヌについては、こちらの特集ページ「カサジェマス(カサヘマス)とピカソの絵画」を適宜参照されたい。

エル・グレコ風のフォルム

ピカソはスペインの画家エル・グレコから少なからず影響を受けているが、「人生 La Vie」においてもエル・グレコを彷彿とさせる垂直的な画面構成とマニエリスム的な誇張された人体のフォルムが見受けられる。

エル・グレコの影響が感じられるピカソ作品としては、「人生 La Vie」以外にも、同じく「青の時代」に描かれた絵画「老いたギター弾き」や、キュビズムの時代に描かれた「アヴィニヨンの娘たち」(1907年)などが知られている。

性愛と母子愛の対比

画面の左側で裸で肩を寄せる二人の男女。そして右側には、赤子を抱きかかえ無表情で二人を見つめる母子像が描かれている。

「裸のカップルが示す性愛に母子愛が対置され、愛の裏側に存在する孤独や苦悩がイーゼルに立てかけられたキャンパスに描き込まれるという複雑な構成となっている。」(参照:東京美術「もっと知りたいピカソ 生涯と作品」)

2枚の絵が示す意味とは?

二人の男女と母子像を中央で隔てる上下の二枚の絵。上には抱き合う男女が、下にはうちひしがれる人物像が描かれている。

この2枚の絵には、ピカソ「青の時代」における孤独や苦悩が描かれるほか、この場所が画家のアトリエであることを示している。

中央公論社「カンヴァス世界の名画 17 ピカソ」によれば、上の絵で打ちひしがれた表情で女性と抱き合う人物はピカソ自身の顔であるという。さらに、二人の男女をみつめる右側の女性は「彼ら(ピカソとカサヘマスいずれか)の母だろう」とも解説されている。

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