受胎告知 Annunciation to the Virgin Mary

天使ガブリエルのお告げにとまどいを隠せない聖母マリア

天のお告げによりヨセフと婚約し許嫁となったマリア(聖母マリア)の元に、ある日突然天使ガブリエルが現れこう告げた。

「マリアよ、おめでとう。あなたは恵まれた方。主があなたと共におられます」(ルカ福音書 1:28)。

天使ガブリエルが告げた突然の御言葉に、マリアは一瞬耳を疑い、ひどく胸騒ぎがした。「恵まれた方」とは何のことか?これから何が起ころうとしているのか?マリアは動揺しながらも懸命に思いめぐらしていた。

聖母マリアが天使ガブリエルから突然のお告げを受ける「受胎告知(じゅたいこくち)」のシーンは、これまで数多くの画家によって描かれてきた。

この上の作品は、バロック期スペインの画家ムリーリョ(Bartolomé Esteban Perez Murillo/1617-1682)が描いたもの。胸の前で両手を重ねる仕草は、神のしもべとしてお告げを受け入れたことを示している。

聖母マリアを象徴するアトリビュート

青いローブに赤い衣服、そして白百合の花と、聖母マリアを象徴するアトリビュート(約束事として描かれる持ち物、小道具など)に加え、「受胎告知」の場面を表す絵画作品では、読みかけで開いたままの聖書が描かれることが多い。

こちらの作品は、ルネサンス期イタリアの画家ボッティチェッリ(Sandro Botticelli/1445-1510)による「受胎告知」。天使ガブリエルが左手で聖母マリアを表わすアトリビュートである白百合を持っている。

ムリーリョの作品ではお告げを受け入れた聖母マリアが描写されているが、ボッティチェッリの作品では、受胎告知直後の動揺した様子が取り上げられている。

「マリアよ、恐れることはない」

突然の知らせに驚きと胸騒ぎを隠しきれない聖母マリア。すると天使ガブリエルは続けた。

「マリアよ、恐れることはありません。あなたは神から恵みをいただいているのです。あなたはみごもって男の子を産むでしょう。その子をイエスと名づけなさい。彼は大いなる者となり、いと高き者の子と言われるでしょう」(ルカ福音書 1:30-33)

マリアは答えた。

「どうして、そんな事があり得ましょうか。わたしは男の人を知りませんのに。」

御使いが答えて言った。

「聖霊があなたに降り、いと高き者の力があなたをおおうでしょう。それゆえに、生れる子は聖なるもの、神の子と呼ばれるでしょう。」(ルカ福音書 1:34-35)

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