エジプトへの逃避 The Flight into Egypt

ヘロデのところには帰るな 騙されたと気付いた大王は激怒し・・・

東方の三博士がヘロデ大王のもとを去りベツレヘムへ出発する際、大王は幼な子の居場所が分かったらすぐに知らせるよう東方三博士に次のように言いつけていた。

「その幼な子のことを詳しく調べ、見つかったら知らせよ。私も拝みに行く」。

しかしベツレヘムでの幼な子イエスへの礼拝を終えると、東方三博士らは夢の中でこうお告げを受けた。

「ヘロデのところには帰るな」

ヘロデ大王は猜疑心が強く、政争で身内を含む多くの人間を殺めてきた冷酷・残忍な支配者。自分の治世に新たな王(幼な子イエス)が誕生したとあっては、決して黙ってはいないだろう。

東方三博士はお告げに従い、別の道を通って自分の国へ帰っていった。

幼な子とその母を連れエジプトに逃げよ

天のお告げは聖母マリアの夫ヨセフのもとにも届けられていた。

「幼な子とその母を連れて、エジプトに逃げなさい。そして、知らせるまでそこにとどまっていなさい。ヘロデが幼な子を捜し出して、殺そうとしている」。

イタリア・ルネサンス期の画家ティントレット(Tintoretto)作「エジプトへの逃避」

バロック期スペインの画家ムリーリョによる「エジプトへの逃避」 1655-60

幼な子の命を狙うヘロデ大王

天のお告げによりヘロデ大王が幼な子の命を狙っていることを知ったヨセフは、夢から覚めるとすぐに飛び起きて、夜の闇に幼な子と聖母マリアを連れてエジプトへの逃避の旅へ出発した。そしてお告げどおり、ヘロデ大王が死ぬまでエジプトで身をひそめ留まっていた。

一方、東方三博士がいつまでたっても戻らないことにヘロデ大王は憤慨。だまされたと悟ったヘロデは激怒し、ベツレヘムの付近にいる二歳以下の男の子をことごとく殺していった。

ルーベンス作「幼児虐殺」 ドイツ国立美術館アルテ・ピナコテーク蔵

ヘロデの子を避けナザレへ

ヘロデの死後、御使いがエジプトにいるヨセフに夢の中でこう告げた、

「幼な子とその母を連れて、イスラエルの地に行け。幼な子の命をねらっていた人々は、死んでしまった」。

しかしヨセフは、ヘロデの子アケラオがユダヤの新たな支配者となったことを知り、イスラエルへ行くことを恐れた。そこへ新たな御告げを受け、ガラリヤ地方のナザレという町に住むことにした。「彼はナザレ人と呼ばれるであろう」との預言が成就する日が近づいていた。

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